今注目の在留資格「特定技能」で、外国人の雇用を検討している企業は多いと思います。そこで、実際に雇用する為の受入機関(企業)の要件や基準、雇用した後の義務や届出について分かり易く解説していきます。
特定技能の全体像については「初めての特定技能入門」で詳しく解説しています。
受入機関の要件(基準)
ここでは、特定技能の在留資格で働く外国人を雇用する為の、企業側の要件や基準をご紹介します。企業側の要件や基準は、大きく分けると以下の5つに分かれます。
- 業種別の「協議会」に加入すること
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
- 受入れ企業自体が適切であること
- 外国人を支援する体制があること
- 外国人を支援する「計画が適切」であること
順番に詳しく解説していきますが、上記5項目の基準をクリアしていないと、特定技能で働く外国人を雇用することはできません。
1.の協議会については「協議会の解説と業種別の加入方法」をご覧ください。
外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
その名の通り、特定技能の在留資格で働く外国人と雇用する企業の間の雇用契約が、以下の基準に適合する必要があります
- 外国人に従事させる業務内容が、特定技能制度で認められている業務内容であること。
- 所定労働時間が、日本人等の通常の従業員の所定労働時間と同等であること。
- 外国人の給料に関して、同じ経験年数や業務内容で働く日本人の給料と同等以上であること。
- 外国人であることを理由に、給料の決定・教育訓練の実施・福利厚生施設の利用・その他の待遇について、差別的な取り扱いをしていないこと。
- 外国人が一時帰国を希望した場合、帰国に必要な休みを与えるものとしていること。
- 企業に派遣する派遣社員として外国人を雇用する場合は、派遣先の企業や派遣期間が定められていること(現状で派遣が認められている業種は農業と漁業のみ)
- 外国人が帰国旅費を負担できない時は、受入れ企業が負担するとともに契約終了後の出国が円滑に行われるよう必要な措置を講じることとしていること。
- 受入れ企業が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講じることとしていること。(例:健康診断を会社で受診させる等)
- 分野に特有の基準に適合すること(所管省庁の定める告示で規定)
上記のピンクのマーカー部分は特に気を付けるポイントです。法務省のHPに「特定技能雇用契約書」という雛形がありますので参考にして下さい。
受入れ企業自体が適切であること
特定技能で働く外国人を雇用する企業として「相応しい企業」であることを求める基準です。以下の基準に適合する必要があります。
- 労働(労災保険や雇用保険等)、社会保険(厚生年金や健康保険)及び租税に関する法令を遵守していること(要するに納税義務を果たしているかどうか)
- 「1年以内」に雇用する外国人と同種の業務に従事する社員をリストラしていないこと。
- 「1年以内」に企業側の責任で技能実習生や特定技能外国人の行方不明者を発生させていないこと。
- 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと。
- 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと。
- 外国人等が保証金の徴収等をされていることを、企業側が認識して雇用契約を結んでいないこと。
- 企業側が違約金を定める契約を結んでいないこと。
- 特定技能で働く外国人に対する支援費用を、外国人に負担させないこと。
- 労働派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が1~4の基準に適合すること(現状で派遣が認められている業種は農業と漁業のみ)
- 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること。
- 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること。
- 給料を外国人の預金口座への振り込み等により支払うこと。
- 分野に特有の基準に適合すること(所管省庁の定める告示で規定)
1の納税義務の履行や、4の欠格事由に該当しない事などは当然ですが、2の従業員を解雇していないことや、5の帳簿の備え付けなどは見落としやすいポイントかもしれません。
外国人を支援する体制があること
特定技能制度では、外国人の支援が義務付けられています。企業側に支援を行う体制があることを求める基準で、以下の基準に適合する必要があります。
- 以下のいずれかに該当すること
- 過去2年間に中長期在留者(技術・人文知識・国際業務などの就労系の在留資格)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役職員の中から、支援責任者と支援担当者を選任していること。
- 役職員で過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験がある者の中から、支援責任者と支援担当者を選任していること。
- 上記2つと同程度に支援業務を適正に実施することができる者で、役職員の中から支援責任者と支援担当者を選任していること。
- 外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制があること(例:中国人を雇用する場合は中国語を話せる従業員がいる等)
- 支援状況に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えおくこと。
- 支援責任者及び支援担当者が、支援計画の中立な実施を行うことができ、かつ、欠格事由に該当しないこと(例:外国人の直属の上司等は支援責任者や支援担当者になれません)
- 「5年以内」に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと。
- 支援責任者又は支援担当者が、外国人及び外国人の上司等と定期的な面談を実施することができる体制があること。
- 分野に特有の基準に適合すること(所管省庁の定める告示で規定)
上記の「外国人を支援する体制があること」の基準は、登録支援機関に支援を全部委託する場合には満たすものとされます。つまり企業側の基準としては免除されます。
外国人を支援する計画が適切であること
特定技能の在留資格を申請する際には、支援計画書を他の申請書類と併せて提出します。支援計画書とは、いつのタイミングでどんな支援をするかを事前に決めておく書面です。「支援計画」については以下の基準に適合する必要があります。
- 支援計画書に記載する内容
- 支援の内容
- 登録機関に支援を全部委託する場合は、登録支援機関の情報等
- 登録支援機関以外に委託する場合は、委託先の情報等
- 支援責任者及び支援担当者の氏名及び役職名
- 分野に特有の事項
- 支援計画書は、日本語及び外国人が十分理解できる言語により作成し、外国人に支援計画書の写しを交付しなければならないこと。
- 支援の内容が、外国人の適正な在留に資するものであって、かつ、企業等において適切に実施することができるものであること。
- 日本に入国前の情報の提供(雇用契約の内容説明や入国までの流れ等)の実施は、対面又はテレビ電話等により実施されること。
- 情報の提供の実施、相談・苦情対応等の支援が、外国人が十分理解できる言語で実施されること。
- 支援の一部を他者に委託する場合は、委託の範囲が明示されていること。
- 分野に特有の基準に適合すること(所管省庁の定める告示で規定)
法務省のHPに「支援計画書」という雛形があります。1の支援の内容に関しては、支援計画書に記載されていますので、参考にしてください。
受入機関の義務
受入機関の義務は、実際に外国人を雇用した後に企業が行う義務を指しています。受入れ企業の義務は以下の3点です。
- 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:給料を適切に支払うや、規定した有給を適切に取得される等)
- 支援計画に沿って外国人への支援を適切に実施(登録支援機関に支援を委託した場合は、実際の支援業務は登録支援機関が行う)
- 出入国在留管理庁への各種届出
1~3を怠ると、外国人を受入れることができなくなったり、出入国在留管理庁から指導・改善命令を受けることがあります。
3の出入国在留管理庁への各種届出は次で解説します。
受入機関が行う届出
受入機関の届出には、随時行う届出と定期に行う届出があります。
随時の届出
- 特定技能雇用契約の変更、終了、新たな契約の締結に関する届出
- 支援計画の変更に関する届出
- 登録支援機関との支援委託契約の締結、変更、終了に関する届出
- 特定技能外国人の受入れ困難時の届出
- 出入国又は労働関係法令に関する不正行為等を知ったときの届出
定期の届出
- 特定技能外国人の受入れ状況に関する届出(例:特定技能外国人の受入れ総数・氏名等の情報・活動日数・場所・業務内容等)
- 支援計画の実施状況に関する届出(例:相談内容及び対応結果等)※支援の全部の実施を登録支援機関に委託した場合を除く
- 特定技能外国人の活動状況に関する届出(例:給料の支払い状況・離職者数・行方不明者数・受入れに要した費用の額等)
まとめ
受け入れ企業の要件や義務については様々なものがあります。特定技能の在留資格で働く外国人を雇用する場合は、これらの要件や雇用後の義務をしっかり理解して雇用する必要があります。
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